皆さん、ご訪問ありがとうございます。日本メディカル美容鍼協会の川畑です。令和元年5月26日(日)に、日本メディカル美容鍼協会(JMCAA)、美容鍼灸の会 美真会、アンチエイジング美容鍼研究会の3団体が初めて共催して行う「美容鍼アカデミックフォーラム2019」(参加者143名)が開催されました。本会の発起人兼座長として開催報告を記します。
3団体での初の取り組み
皆さんご存知の通り、美容鍼には業界基準となるガイドラインが存在せず、安全で良質な美容鍼が普及するために各教育団体間で共有できる一つの指針を作ることが急務であります。そこで、志を共にする我々教育3団体は、2018年から1年以上かけて「美容鍼リスクマネジメントの自主的なガイドラインを作る」ことを目標に、議論と検討を重ねてきました。そして、その自主ガイドラインが出来上がった暁には、大きなセミナーを一緒に開催して多くの鍼灸師の皆様にお伝えしよう!ということになって企画されたのがこの「美容鍼アカデミックフォーラム2019」でした。とにかくアカデミックな内容にしたいという想いから、「アカデミックフォーラム」と命名しました。美容鍼は研究と呼べるものが少なすぎて、現時点では学会などとは口が裂けても言えませんが、アカデミックフォーラムは会のコンセプトが上手く表現された良いネーミングだったと満足しています。
豪華なゲスト講師陣
本フォーラムのゲスト講師陣は大変豪華な顔ぶれとなりました。まず会の冒頭に基調講演をいただいたのは、2018年に開催された「第36回 日本美容皮膚科学会総会・学術総会」の会頭を務められた尾見徳弥先生(医学博士、クイーンズスクエアメディカルセンター専務理事、日本医科大学客員教授、東京医科大学兼任教授)です。尾見先生からは、美容皮膚科の歴史をはじめ、各美容医療の特徴と解説、また医療広告ガイドラインまで広く美容医療の基礎について分かりやすくご講義いただきました。美容鍼を扱う鍼灸師が美容医療の基礎を正しく理解することで、美容鍼との有効な併用法や正しいスキンケアアドバイスも提供することができるので、本講演を機に、今後も鍼灸師がより美容医療の最先端を勉強できる機会を作っていきたいと考えています。日本美容皮膚科学会が設立されて25年(前身の美容皮膚科研究会を含めると32年)と知り、美容鍼がここから30年でどこまで進歩できるのかに想いを馳せながら拝聴いたしました。尾見先生のような美容皮膚科界の大先生の講演座長も務めさせていただき、大変緊張しつつも勉強させていただきました。尾見先生、ありがとうございました。
次の教育講演では、文京学院大学保健医療技術学部教授の樋口桂先生(医学博士)にご登壇いただき、表情筋の解剖学的特徴についてご講義いただきました。鍼灸師の皆さんに身近なところでは、樋口先生は鍼灸専門学校のテキストである「解剖学(第2版)」の著者のお一人であります。樋口先生の講義では、表情筋の成り立ちから、表情筋の各階層とその特徴、シワの発生機序、血管や神経、またリンパの走行まで、網羅的にお話しいただきました。皮膚の下には血管・リンパ・神経が複雑に走行しており、表情筋の解剖学を正しく学んでおくことは、美容鍼のリスク管理を考えるうえでも、効果を出すうえでも必須であることを再認識した教育講演となりました。樋口先生には今後も美容鍼業界を応援いただけることをお約束いただいていますので、また勉強させていただく機会を作りたいと考えています。樋口先生、ご多忙のところありがとうございました。
そして教育講演の2題目は、東京大学リハビリテーション部鍼灸部門主任として大活躍されている粕谷大智先生による「末梢性顔面神経麻痺の鍼治療」です。最新の海外論文やご自身の研究データを交えながら、末梢性顔面神経麻痺の病態やその治療法、そして表情筋の特徴やパルス通電に関する最新知見と注意点についてご講義いただきました。美容鍼を提供する鍼灸師が、顔面神経麻痺の最新の治療方針やパルス通電に関する注意点を正しく論理的に学んでおくことで、麻痺のある方や既往歴のある方が美容鍼を受けに来られた際にどのように説明し対応すべきか、参加の皆さんは分かりやすく理解したのではないかと思います。粕谷先生には、これまでに美容鍼に対する期待と課題をたくさんいただいています。期待に応えられるよう、美容鍼の研究を進めていかなければなりません。講義とはまったく関係ないんですが、粕谷先生ってお会いするたびに若くなられているように感じるんですよね、どこかで美容鍼受けていらっしゃるんじゃないかな、とひそかに疑っています。
今回の3名のゲスト講師の講演は、最新の医学的知見に富んだ内容で、今後の美容鍼を担う143名の参加者にとって、また美容鍼灸界にとっても大きな財産になる講義となりました。あらためてご登壇に心より感謝申し上げます。
主催3団体代表の発表
フォーラム後半は、主催3団体の各代表による発表でした。トップバッターは、美容鍼灸の会美真会代表の折橋梢恵先生。折橋先生からは、本フォーラムで初めて公開され冊子として配布された「美容鍼リスクマネジメントの手引き」について解説いただきました。もともとは自主ガイドラインという名前を付ける予定でしたが、ガイドラインと呼ぶには時期尚早と判断し、「手引き」という形になりました。本手引きは、さらに情報を充実させ、第2版、第3版と出していきたいと考えています。本手引きは近く誰でも入手できるように販売する予定ですので、準備が整うまで今しばらくお待ちいただければと思います。それにしても折橋先生、ご自身の膝にできたアザまで内出血回復の研究対象にして、さすがのプロフェッショナルです。
続いての発表は、日本メディカル美容鍼協会代表の岡本真理による「内出血の発現頻度研究」です。岡本からは、内出血の発現機序、出血傾向のある基礎疾患、気を付けるべき併用薬などについて解説した後、麻布ハリークで実施された内出血の発現頻度研究の結果をご紹介いたしました。美容鍼の技術によって発現頻度には差が出てくるものと思いますが、お客様に内出血が発現する可能性やパルス通電による内出血のリスクについてお伝えするうえで、一つの参考指標として意義のある研究だったのではないでしょうか。美容鍼による内出血については論文もほとんどありませんので、本研究はどこかで論文としてまとめたいと考えています。
フォーラムのトリを務めたのは、アンチエイジング美容鍼研究会代表の長谷川亮先生。長谷川先生には、顔面部へのパルス通電の効果について、予備的な研究成果を発表いただきました。パルス通電により、フェイスラインや目の下のたるみの改善が見られたこと、皮膚温度の上昇が見られたこと、そして皮下組織の密度に影響を与える可能性があることを実データをもとにご紹介いただきました。科学的な実証研究が少ない中で、今回の予備研究は非常に意味のあるものであったと思いますし、今後のさらなる研究課題に繋がった素晴らしい取り組みとなりました。あらためて、業界一丸となって美容鍼の効果研究を推し進めていかなければならないと強く感じた発表でした。
最後に
本フォーラムの企画や準備はなかなか大変でしたが、3団体で大型イベントを共催するという新たな試みを達成できたこと、美容鍼の学術レベルを一歩高いところに進められたこと、そして何よりも、今回参加された皆さんの熱気や勉強意欲の強さを肌で感じられたことは、本会の発起人として非常に嬉しく思っています。この「美容鍼アカデミックフォーラム」は来年以降も継続して開催していきたいと考えていますし、美容鍼が他の美容医療と肩を並べる美容法になる日を夢見て、業界の仲間とともに尽力していきます。
最後になりますが、本フォーラムにご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。皆様の熱気と本気は、前に座っていてもひしひしと伝わってきました。全員とご挨拶できなかったのが残念です。そして、本フォーラムに協賛いただきましたセイリン株式会社様、株式会社メイプル名古屋様、株式会社coco様、ご取材いたいだいた株式会社医道の日本社様にこの場をお借りして深く御礼申し上げます。また、本フォーラムの準備や当日運営を担当していただいた美容鍼灸の会 美真会、アンチエイジング美容鍼研究会の皆様、皆さんがいなければここまでの会を無事に開催することは不可能でした。3団体は本当に良いチームです、これからも共に志高く頑張っていきましょう。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
美容鍼アカデミックフォーラム2019 発起人日本メディカル美容鍼協会 川畑充弘