パルス美容鍼に関する当協会の見解


【2024/05/07追記】
低周波鍼通電を行う際は、「鍼灸の安全対策サイト(公益社団法人全日本鍼灸学会臨床情報部安全性委員会作成)」から出されている、「鍼電極低周波治療器の安全確保のための基準に関する勧告」をご確認いただくことをお勧めします。


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(以下、原文)

平成29年12月現在、低周波治療器を用いた美容鍼施術(以下パルス美容鍼という)は日本全国で広く普及しており、その有効性・安全性はパルス美容鍼を提供する鍼灸師のなかで経験的に蓄積され、年間のパルス美容鍼施術数は推定5万件を超えます。

多くのパルス美容鍼施術が提供されているなかで、パルス美容鍼特有の重篤な有害事象や重大なトラブルは本協会では確認しておらず、低周波治療器を開発販売するメーカーや、相当数のパルス美容鍼施術を提供する美容鍼専門院の先生方に問い合わせても、問題となる特有の事象は把握していないとの回答を得ています。

一方、最近になって、顔面神経麻痺に対して低周波治療が推奨されていない事実を元に、表情筋に対するパルス美容鍼の安全性について心配する声が上がっています。

実際に、日本顔面神経研究会が出版した「顔面神経麻痺診療の手引き-Bell麻痺とHunt症候群-」のなかで、「神経筋電気刺激(低周波治療)は有害である(グレードD)」とされており、さらにその解説のなかで、「低周波治療は神経筋刺激による筋収縮を起こし、骨格筋の神経再生に有効な物理療法である。しかし、ENoG値40%の顔面神経麻痺の症例に対しては、患側全体の粗大で強力な筋収縮を誘発するために、神経断裂繊維の迷入再生も促進し、病的共同運動の原因になる。さらに顔面神経核の興奮性亢進をいっそう促して、筋短縮による顔面拘縮を助長することになる。(栢森良二)」との記載があります。

上記を根拠に、「果たして表情筋へのパルス美容鍼は問題ないのだろうか?」「果たしてパルス美容鍼を施術している鍼灸師はこのことを知っているのだろうか?」という自然な疑問につながったわけです。
事実、顔面神経麻痺に低周波治療をしている鍼灸師も多く、ご存知でなかった先生も多いのではないでしょうか。

日本神経治療学会から出されているBell麻痺の標準的神経治療のなかでも、同様の詳細解説を読むことができますので、ぜひご参照ください。

以下は、本件に関する当協会の見解です。

冒頭に触れた通り、年間数万件のパルス美容鍼施術が行われているなかで、パルス美容鍼特有の重大な有害事象報告は上がってきていません。
その状況下で、「顔面神経麻痺の患者にパルスは有害である」=「パルス美容鍼は有害である」と結論付けるのは早計だと考えます。
何故なら、パルス美容鍼が有害であると結論付けられた研究は無いことに加え、我々はそのリスクの可能性だけを論じるのではなく、ベネフィットも合わせて論じるべきだからです。

一方で、パルス美容鍼を提供する鍼灸師は、顔面神経麻痺の患者に低周波治療は推奨されていないことを頭に入れ、その理由や表情筋の特性をしっかりと理解して施術に当たるべきです。
例えば、顔面神経麻痺の方やその既往歴のある方にはパルス美容鍼は避け、それ以外の方にも必要以上に粗大な表情筋運動は避けるべきでしょう。
過去の経験からみて可能性は低くても、表情筋への通電で何かしらの問題が起きるリスクはゼロではないからです。
本協会サイトで無料ダウンロードできる美容鍼問診票の雛形にも「顔面神経麻痺の過去診断の有無」を確認できる項目を追加いたしましたので、皆さまにご利用いただければ幸いです。

また、「パルス美容鍼は有益である」という主張も、その根拠は、理論や経験に基づくものでしかなく、実際に有効性・安全性を検討した研究は殆どありません。
これは、美容鍼全体に言えることですが、有効性・安全性を検討する研究の推進は大きな課題ですので、協会としても積極的に取り組んでいきたいと考えています。

最後に、
当協会でもパルス美容鍼を「立体造顔美容鍼®の基礎技術」として受講者の皆さまにお伝えしていますが、パルス美容鍼は、理論的・経験的に有効性・安全性が高く、顧客満足度の高い施術だとの認識・立場に全く変わりありません。

現在パルス美容鍼を提供されている先生方は、周辺知識をしっかり勉強したうえで、引き続き自信を持って安心して施術を提供していただきますようお願いいたします。

当協会主催の「1Day基礎コース」では、顔面神経麻痺への低周波治療や、パルス美容鍼のリスクマネジメント、表情筋の特性について、座学・実技内容に含めて受講者に学んでいただいています。

医学的知識に基づく美容鍼を学びたいという先生は、ぜひ「1Day基礎コース」や、その後に続く協会の勉強会にて共に学んでいきましょう。

皆さまと力を合わせて、より良い美容鍼を創り、健康で美しい社会に貢献したいと願っています。


文責:日本メディカル美容鍼協会 代表 岡本真理



【注意事項】
※本見解は、当協会独自のものです。美容鍼施術、パルス美容鍼施術を提供するにあたっては、各自周辺知識を十分に勉強し、自己責任のもと行っていただきますようお願いいたします。

※本協会は、パルス美容鍼のすべての有害事象を把握できているわけではありません。重大な有害事象等があった際は、何かしらの形で皆様に情報共有したいと考えております。

※本見解は、平成29年12月時点でのものとなります。今後の知見次第では変わる可能性があるということをご理解ください。